「英語論文を読んで発表してもらうから」「まず、研究に関連するこの医学論文読んどいて」そんな言葉を担当教員から配属直後に言われて研究室が始まるのではないだろうか?
薬学生である僕の研究室でも、4年次から英語論文を読んで発表するゼミがある。でも、「いきなりそんなこと言われても分からない!」というのが本音。そう、英語の医学論文の読み方や見つけ方を知らないのだ。
意外と困ることの多い研究室配属直後の学生に、「英語論文の読み方」を少しでも理解してもらえたらと思って7つのステップに分解してお届けしたい。これをクリアすれば、ある程度英語医学論文にも親しみがわくはずだ。
- 研究室の卒業論文を読んで型を知る
- 医療ジャーナルメディアで医学論文の面白さを知る
- 英語医学論文の抄読ブログを読みPECOや批判的吟味を学ぶ
- Pubmedを使って英語医学論文を検索してみる
- 医学論文を批判的吟味しながら読んでみる
- 統計の壁にぶつかったら、医療統計の本を横に置こう
- EBMの勉強会に参加してみる
- 最後にまとめ
研究室の卒業論文を読んで型を知る
まずは、論文の構造や研究室の研究について学ぶために卒業論文を一読するのが良いと思う。学生が書いた文章なので、分かりやすく書いてある。そして、何より直接すぐに質問をする事が出来る。
ここで学べる事は、論文の型。日本語の論文にはなるが、英語でも型は基本的に同じ。まずは、論文という文章に慣れるために研究室にある卒論や修士論文を読もう。
医療ジャーナルメディアで医学論文の面白さを知る
最近は、海外のインパクトファクターが高い医学論文を元に記事を作っているメディアがある。いわゆる「ホン○でっかTV」のもっと信用性のある医学、健康関連のニュースにある。医療従事者用に有名なジャーナルをピックアップしているメディアから、一般向けに配信しているメディアもある。
インパクトファクター(文献引用影響率)とは、特定のジャーナル(学術雑誌)に掲載された論文が特定の年または期間内にどれくらい頻繁に引用されたかを平均値で示す尺度のこと。
下記の3つのメディアを流し読みをして、面白い論文を見つけてみてはどうだろうか?研究室の英語論文の課題になるものも見つかるかもしれない。
MEDLEYニュース
株式会社メドレーが提供する医療ジャーナルの最新動向メディア。医師たちがつくるオンライン病気事典と連携もしており、文中の専門用語に注釈がついている。
Medエッジ
「最先端を親切に」をテーマに株式会社DeNAライフサイエンスが運営する医療メディア。日経BP出身の記者が編集長をつとめている。大腸がんや糖尿病等の専門メディアも始めたようだ。
日経メディカル海外論文ピックアップ
日経メディカル海外論文を紹介するコーナー。こちらは医療従事者向けになっており、上記の2つよりは長文で解説されている。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/treatise/
英語医学論文の抄読ブログを読みPECOや批判的吟味を学ぶ
ありがたいことに現場の薬剤師や医師の方が批判的吟味をしながら、英語医学論文の抄読ブログを書かれています。情報量は多いですが、PECOや研究デザインなどわかりやすく書かれていていて医学論文の読み方の概要が分かる点が特徴です。
現場で実際にどのように医学論文から情報を得ているか、臨床での疑問をどうPECOで定式化するかなど、医療学生ならチェックしておきたいブログです。ここでは、実際に英語論文を読んだらどのようなアウトプットが出てくるのか?というのを学べます。
Pubmedを使って英語医学論文を検索してみる
Pubmed(パブメド)とは、米国立医学図書館が提供する世界最大級の医学・生物文献データベース。医学英語論文を探すと言えば、ほとんどPubmedを使います。ただ、英語のサイトなので、検索方法もわかりにくい。
そういう場合は、下記のPubmed検索法を見ながら調べてみましょう。これから研究室で何度も文献検索をするので、これは確実に覚えたい所。
EBM資料集−最もシンプルで分かりやすいPubMed 検索法 [The SPELL]
医学論文を批判的吟味しながら読んでみる
ようやく医学論文の読み方を学ぶ所まで辿り着きました。Pubmedで検索した論文か、医療メディアで気になった論文を読んでみましょう。でも、ここでも補助的なツールを使います。
下記のEBMはじめてシートや、地域医療日誌を書かれている薬剤師の方の批判的吟味しながら論文を読む方法を横において読み始めましょう。どこから取り付けば良いかわかるはずです。
統計の壁にぶつかったら、医療統計の本を横に置こう
医学論文を読んでいて必ずと言っていいほど、わからなくなるのが統計。私自身も正直統計的判断を正しくできているか怪しいところがあります。
英語の医学論文を読む時は、批判的吟味のチャックシートと、医療統計の本を横に置いて分からなくなったら該当箇所を読むようにしましょう。そして、それでも分からなかったら先生に聞いてみるのが良いと思います。
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EBMの勉強会に参加してみる
自分だけで勉強するのも限界があると思います。大学の外に飛び出して勉強してみたい方は、EBMの勉強会に参加してみてはいかがでしょうか?
毎月EBMに詳しい薬剤師3人が医学論文の抄読ツイキャスで放送する、JJCLIP(薬剤師ジャーナルクラブ)や、EBMのワークショップを全国で開催されている南郷先生主催の学生EBM勉強会(pES club)が有名です。
薬剤師ジャーナルクラブは、堅苦しくない放送が好きで私も時々参加させて頂いてます。
これでインプットは終わり。英語論文を読んだ後、発表がある場合はスライドデザインの本を参考にしてみてください。
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最後にまとめ
さて、これまで研究室生活で得て来た知識を全て動員して、英語の医学論文の読み方の7つのステップを書いてきました。これを全部やるのは、1ヶ月くらいかかりそうですね(笑)
研究室配属が決まっても、どこから手をつけてみたら良いかわからない学生。5年生になったけど、まだあまり論文の読み方が分からなかった!という方の参考になれば幸いです。